
【甘酒は介護食にも使える?!】
筆者は病院で管理栄養士をしていた頃
入院患者さんの栄養状態を整えて寝たきりや褥瘡(床ずれ)を予防することが目下の課題でした。
特に、高齢者の入院患者さんは長期化しやすいので、経口摂取ができるうちにしっかりと栄養を摂取して
QOL(クオリティ オブ ライフ の略)を向上させるためにも
「何を食べてもらうか」というメニューの選択は非常に重要なポイントでした。
そこで、甘酒が介護食、そして高齢者の寝たきり予防食としても適正な理由
としてその活用方法についてをご紹介していきたいと思います!
【甘酒が介護食としてもおススメな理由とは?!】
①【少量でエネルギーを摂取することが出来る】
甘酒は、大さじ1杯あたり約16kcalものエネルギーを含んでいます。
食欲が低下している高齢者にとって「一口一口の栄養」というのは非常に大事になってきます。
そこで、なるべく高カロリーで高栄養のものを喫食して頂く必要があるのですが
高カロリー・高栄養の食べ物(介護食品)というのは味が濃く高齢者のお口に合わないことが良く有ります。
そこで...自然な甘さのある甘酒がおススメなのです。その方の好みも有りますが
筆者の経験上、同じ一口でも、食欲が低下している方ではお肉やお魚の香りがプーンと香るものよりも
シンプルに甘い味つけのものの方が、喫食率が上がりました。
(若い人でも、風邪をひいている時や体調を崩している時に
おかずは受け付けないけどプリンやゼリーなど甘くて食べやすいものなら食べられる感覚と同じイメージです)
また、食欲はなくてもアイスなどひんやりとのど越しが良いものだと食べられる
という方もいらっしゃるので、冷たく凍らせてみたり
甘酒をゼリー状にしてデザート感覚で召し上がって頂くのもおススメです。
②【自然なトロミがついている為、飲み込みやすい】
また、甘酒はお粥をベースに作られる発酵食品の為、トロミ剤を使用しなくても
自然のトロミがついています。現在は様々な優れたトロミ剤が出ていますが中には
「トロミ剤独特の味が苦手...」と、“咽せ“があるのにトロミ剤を敬遠される方もいます。
そこで、自然な甘さが付いている甘酒ですと、風味を変える事無く喫食することが可能な為
トロミ剤を減らして介護食として使用することが出来ます。
但し、甘酒の甘さや粒でむせることも有るので、最初のうちはお湯で薄めて伸ばしたり
ミキサーにかけたあとで様子見することをおススメします。
また、市販のトロミ剤と併用をしてその方にあったテクスチャー(粘度)に調整すると良いでしょう。
③【糖尿病をお持ちの方の砂糖変わりとして活用できる】
高齢者は、糖尿病、高血圧など持病を抱えているケースも多いのですが
「好きな食べ物が控えた方がよい食べ物」
である可能性が高いのも事実。
例えば、糖尿病が有る方で“甘いものが好き”な方は非常に多いです。
しかし、寝たきり予防の為には砂糖の摂取は適度にしていく必要が有ります。
そこで、煮物などの味付けや、デザートの甘さを調整する為の「甘味料」として
甘酒を活用するという方法が有ります。
自然な甘さでコクも出やすくエネルギー補給にもつながるので、煮物や焼き魚などに加えても良いです。
【介護食には「甘酒+たんぱく質」の組み合わせがポイント!】
さて、介護食として甘酒を活用する為には栄養バランスのポイントとして
「甘酒」オンリーではなく「甘酒」+「タンパク質」(+ミネラル)の組み合わせを推奨したいと思います。
その理由は...
①高齢者のQOL向上にとってタンパク質補給というのは大きな課題であること。
②タンパク質を補給することで寝たきり予防や(寝たきりの方でも)褥瘡予防に繋がるということ。
甘酒と組み合わせることで、甘酒がエネルギー源となりタンパク質の代謝を促すからです。
そこで、例えば甘酒単品だけではなく
〇甘酒+ヨーグルト
〇甘酒+牛乳
〇甘酒+豆乳
のように、組み合わせて提供したり
〇魚の甘酒付け焼き(魚+甘酒+醤油)
〇鶏肉の甘酒醤油かけソテー(鶏肉+甘酒+醤油+油)
のように、おかずの甘味料として“みりん代わり”で使用するなどすると良いでしょう。
【何といっても大事なのは“美味しい”こと】
介護食ということに囚われると、つい「寝たきり予防」とか「床ずれ予防」とか
「カロリーの摂取」のように栄養補給のことばかりに気を取られがちですが
一番重要なのは「美味しくある」こと。
市販の高カロリー食品で補うことも大切ですが、高齢者の方が食べて
“美味しい”という喜びの感覚がQOL向上の為にも非常に大事だと考えます。
甘酒を上手く活用することで食べやすく美味しい介護食を実現し
高齢者が喜んで喫食するような環境づくりにしていきたいですね!
(管理栄養士 川村いくこ)